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知っておくと便利なことばかりですので、覚えておくことをお勧めします。
当社は、工作機械の部品メーカーです。3年ほど前に当社の技術部門に所属していた従業員Aが発明した部品の製造方法(本件製造方法)を使用して部品の製造販売をしていたところ、Aが、当社を退職した直後、本件製造方法の使用とその方法によって製造された製品(本件製品)の販売は、Aの特許権(本件特許権)を侵害するものであるから、本件製造方法の使用と本件製品の販売を直ちに停止するよう要求してきました。
当社で調べたところ、Aは、当社が本件製品の製造の準備を始める前に、本件製造方法についてAの名義で特許出願をしていました。
当社としては、Aからのこの要求(本件要求)に対してどのように対応すべきでしょうか。
1 職務発明に基づく通常実施権
本件製造方法について職務発明が成立していれば、貴社は、職務発明に基づく通常実施権を主張して、本件要求を拒むことができます。
職務発明とは、従業者等の行った発明であって、使用者等の業務範囲に属し、従業者等の現在又は過去の職務に属する発明をいいます。職務発明については、特許が成立した場合、使用者等はその特許権について無償の通常実施権を取得します(特許法35条1項)。
2 職務発明の成立
職務発明の成立要件は、(1)使用者等の従業者等である者が発明をしたこと、(2)当該発明が性質上使用者等の業務範囲に属すること、及び(3)当該発明をするに至った行為が使用者等における従業者等の現在又は過去の職務に属すること、の3つに分けることができます。
(1)でいう「従業者」とは、一般的に、使用者等の実質上の指揮命令に服する者をいうと解されており、職務の実態に即して判断する必要があります。
Aは、貴社の技術部門に所属していた従業員ですので、使用者等である貴社の実質上の指揮命令に服する関係にあった者と思われます。したがって、本件では、使用者等の従業者等である者が発明をしたことという(1)の要件については問題ないと思われます。
(2)でいう「業務範囲」とは、一般的に、定款に定められた目的(登記事項証明書で確認できます。)とは関係がなく、現実の事業実態に即して判断されるべきものであり、使用者等の業務遂行と技術的に関連のある範囲をいうと解されています。
貴社は、本件製造方法が発明された当時、工作機械の部品メーカーとして、当該部品の製造を貴社の事業として継続していたものと思われます。また、貴社は、本件製造方法の発明後に、本件製品の製造を始めていますから、本件製造方法は、貴社が事業として継続していた工作機械の部品製造と技術的に関連があると認められます。したがって、本件では、発明(本件製造方法)が性質上使用者等の業務範囲に属することは問題ないと思われます。
(3)は、一般的に、職務該当性と呼ばれています。職務該当性の有無の判断については、裁判例によると、次のように類型化することができます。
(1)技術部門担当の最高責任者のような地位にある従業者従業者は、このような地位に基づき、当該発明の完成に向けて努力すべき具体的な任務を当然に有していたはずですから、当該従業者に対する具体的な命令の有無や内容、具体的な便益供与の有無や内容を問うことなく、職務該当性は認められます(最高裁判所昭和43年12月13日判決、神戸地方裁判所平成元年12月12日判決、大阪高等裁判所平成2年9月13日判決)。
(2)技術部門担当の最高責任者のような地位にない従業者- ア 具体的な開発命令があった場合
従業者が、特に使用者等から特定の発明の完成を命ぜられたり、具体的な課題を与えられて研究に従事していたりした場合には、職務発明該当性は認められます(大阪地方裁判所平成6年4月28日判決)。 - イ 具体的な開発命令がなかった場合
この場合でも、従業者の本来の職務内容から客観的に見て、その従業者がそのような発明を試みそれを完成するよう努力することが一般的に予定され期待されており、かつ、その発明の完成を容易にするため、従業者に対し便宜を供与しその研究開発を援助するなど、使用者が発明完成に寄与していれば、職務該当性は認められます(前掲大阪地方裁判所平成6年4月28日判決、東京地方裁判所平成14年9月10日判決)。 - ウ 開発中止の命令があり、その命令に逆らった場合
この場合でも、少なくとも、従業者がその勤務時間中に、使用者の施設内においてその設備を用い、その従業員である補助者の労力等も用いて当該発明をするに至ったのであれば、職務該当性は認められます(東京地方裁判所平成14年9月19日中間判決)。
本件では、Aの地位や具体的な命令に関する事実は明らかではありませんが、いずれにしても、本件製造方法を発明するに至ったAの行為について職務該当性が認められると思われます。
以上のように、Aによる本件製造方法の発明について、(1)ないし(3)が認められる場合、職務発明が成立し、貴社は、職務発明に基づく通常実施権を主張して、本件要求を拒むことができます。この場合、貴社は、Aに実施料を支払わないで、本件製品の製造販売を継続することができます。
なお、本件では問題となりませんが、(3)でいう「過去の職務」とは、同一使用者の下での過去の職務をいいます。たとえば、甲社を退職し、別会社である乙社に就職した後、乙社の業務に属する発明をした場合、当該発明に至る行為が甲社での職務に属するからといって、「過去の職務」に該当することにはなりません。
ちなみに、Aは、貴社が本件製品の製造の準備を始める前に、本件製造方法について特許出願をしていますので、先使用による通常実施権は認められないと思われます。
以上
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